ぬま田海苔4代目当主。前職はアパレルで実家の海苔屋へ転職。世界で唯一の有明海産初摘み海苔専門店として、日本の伝統食である海苔やうまみの魅力を合羽橋から世界の食卓へ発信中。
自身でnoteに執筆中。
ぬま田海苔のウェブサイトはこちら
ぬま田海苔4代目当主。前職はアパレルで実家の海苔屋へ転職。世界で唯一の有明海産初摘み海苔専門店として、日本の伝統食である海苔やうまみの魅力を合羽橋から世界の食卓へ発信中。
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第1回 | 海苔には 個性がある。 |
│2021年9月22日(水) |
第2回 | 「ぬま田海苔」 の役割。 |
│2021年9月23日(木) |
第3回 | 「海苔のおいしさ」 について。 |
│2021年9月24日(金) |
沼田
第1回、第2回でも説明してきましたが、海苔の「等級」で重視されているのは、「見た目」なんです。香りやおいしさではないんです。それは海苔が贈り物として選ばれてきたことと関係していると思うんですが。穴が空いていなくて、色艶の良い、見た目のいい海苔が贈り物としてはいいですからね。
平井
「おいしい海苔」と「いい海苔」は必ずしも一致しない?
沼田
そうなんです。業界でいう「いい海苔」の特徴は、これまでただひとつでした。見た目が良くて歯切れがいいもの。そうじゃない海苔は「いい海苔」ではないんです。
「いい海苔」に対する考えが固まってしまうと、どうしたって生産されるのは同じような特徴の海苔ばかりになる。
平井
そうなりますよね。
沼田
「いい海苔」として出回るのは同じ特徴の海苔ばかりだし、評価される特徴も限られているから、お客さんも海苔のことを詳しく知る必要がなくなる。これだと、誰だって「海苔って全部同じなんだな」と興味なくなってしまいますよね。本当は海苔ごとにいろんなおいしさがあるのに。
平井
沼田さんはそんな業界の固定観念から外れて、海苔の魅力を届けていると。
沼田
おいしいものを届けたい、それだけですね。でも海苔って、「おいしい提案」が限られてしまいやすくもあって。
平井
「おいしい提案」が限られるというのは?
沼田
海苔はごはんと食べる。おにぎりに巻く。寿司に使う。食べ方はそれだけ、みたいなことです。
海苔の食べ方の行き先が決まってしまっているんです。
平井
あーなるほど。
沼田
でも海苔をおいしく食べる方法をちゃんと考えると、「この海苔は厚みがあるからモッツアレラチーズと食べて」とか「この海苔は歯切れがいいから刺身巻きで食べて」と提案できるものなんです。
平井
うわ!食べたくなる!
沼田
海苔の新しい食べ方がわかると夢が広がりますよね。例えば「服」だったら、これをどう着たら自分らしくなるのか。家にあるどんな服と合わせると格好いいのか。それを考えるとたのしいじゃないですか。それと一緒だと思っていて。
平井
海苔で夢が広がる。素敵だなぁ。何か新しい食べ方をもう少し教えてください!
沼田
そうですね…。平井さん、佃煮は食べますか?昆布の佃煮などでいいので、海苔と一緒に食べてみてください。とくに「鹿島第三初◯2」という海苔とは相性が抜群です。
この海苔は、重厚感のある甘みと深みが特徴なんですが、穴が空いているので口溶けも良くて、佃煮のように辛めに煮込んだものと一緒に食べると…もう、本当においしいんです!
平井
へー!それは試してみたいです。というかその話だけでもう買いたくなる…!
沼田
おいしいことを提案されると、人って食欲が沸きますよね。「食べたい」て気持ちは幸せなことだと思いますし、「食べたい」と思ってもらえることも、僕は幸せだと感じるんです。
平井
ところで、海外の人から日本の海苔はどう見えてるんですか。
沼田
海外では「海苔がおいしい」と思っていない人が多いと思いますよ。
平井
え、そうなんですか?
沼田
おいしい海苔に出会う機会がないからだと思います。
実は世界で海苔は人気食材ですし、海外での海苔の生産量は増えています。でも日本での海苔の生産量は減っているんです。
海外の海苔がおいしくないわけでは決してないのですが、日本産の海苔の繊細な味わいを体験できる機会が減っています。そうすると、この先も「海苔がおいしい」ということに気づけないままの人も…
平井
それはさびしいですね。
沼田
本当にさびしいことです。だからこそ、海外の方に日本のおいしい海苔を知ってもらう機会が、ますます大事になるだろうと感じています。
…そうだ。この動画をぜひ見てほしいです。
(スマホを取り出して動画を再生)
※ある海外の男性シェフが、「ぬま田海苔」の海苔を食べたあとに、指をパチン!と鳴らして笑顔で「so melty!(口どけが良いね!)」という映像が流れる
ちょうど昨日動画を送ってきてくれて。
指を鳴らしてパチン!「so melty!」ですよ。いやー嬉しいなと思って。自分も何か食べたときに、これやろうと思って 笑
平井
ははははは!それはいいですね!
沼田
ですよね!うちの海苔を食べて「口どけするね!」と驚いてくれる。おいしい海苔で感動してもらえるんです。
平井
なんだか日本人として嬉しいです。
沼田
この感覚なんですよね。嬉しすぎます。
平井
その料理人の方は、これまでも海苔は食べたことあったわけですよね?
沼田
そうですね、でも先ほど言ったように、ここまで口どけ良い海苔は食べてこなかったようです。こんなにおいしい海苔が、なぜ築地以外で売っているんだ?日本のマーケットといえば築地じゃないのか?と話していましたね。
平井
たしかに、海外の方はそう思うでしょうね。
沼田
実際、築地でも良い海苔は売っています。でもこれも先ほど説明したように、海苔って価格もおいしさも幅広いので。うちの海苔を食べたときに、おいしさがちがうと感じたようですね。
そういう意味でも、海苔は海苔でも産地や等級によって異なるんだということをもっと発信していきたいなと思っています。
平井
海苔業界、このさき明るいですか?
沼田
…わからないです。先ほども少しお話したように温暖化が進んで、日本の海苔の生産量は減ってきています。そうした中で海苔全体の未来がどうなるかは、正直わかりません。
ただ、それを考えすぎるよりは、海苔の魅力をより多くの人に知ってもらっていまある海苔の価値を少しでもあげること。そこに注力する方がいいなと考えるようにしています。
平井
自然との向き合い方に似てますね。少し先は見据えながらも、起きることにしなやかに対応する。
沼田
海苔の業界って新規参入のイメージありますか?
平井
いや、ないですね。
沼田
その印象通りで、漁師さんも海苔屋も後継者問題があって。でも、もし業界に未来があるなら、後を継ぐ人はいくらでもいると思うんですよ。
だから、自分は「明るくなるようにがんばり続けていきたい」と思っています。
<終わります>