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週刊・◯◯公論
今回の
テーマ
食欲

食に関わる方をゲストに招き、
毎回異なるテーマを掲げ
佐藤一成とゲストが欲望のままに
公論を進めていく番組です。

第一回のテーマは、ズバリ「食欲」。
とはいっても食だけに偏らず色々な欲望についてお聞きしたいと思います。
ゲストは全国各地の400以上の醤油蔵を訪問している醤油のスペシャリストである職人醤油の高橋万太郎さん。
今回、このテーマに対して万太郎さんをゲストに選んだ理由は「万太郎さんからは欲を全く感じないから。」
今日は公論しながら万太郎さんの奥に潜む欲を引っ張り出したいと思います。

佐藤一成
地域で起きている社会課題をその地域に必要な解決方法を模索し提案・実施することに携わる。第1次産業と食に関わる課題に「6次化・物流・新規就農・体験」などで解決できるよう取り組んでいる。最近の興味は食の物流。株式会社良品計画に所属。
高橋万太郎

「丹精込めて作る製品には自信と誇りを持っているが、大量生産された製品に価格競争で勝てない。しかし職人は商人ではない。できることなら、ものづくりに専念できるのが理想なのだが…」という職人の声に耳を傾け、この産業分野での起業。「つくり手」と「使い手」の「つなぎ手」となる組織を目指して(株)伝統デザイン工房を設立。日本の食文化に欠かせない醤油業界に特化し、WEBサイト「職人醤油.com」を立ち上げる。

佐藤

今日はよろしくお願いします!
今回の公論テーマは「欲」です。
まぁ第1回目ということもあるのでマガジンのテーマに合わせたというのもありますが。
何回かお仕事ご一緒させてもらっているのですが、万太郎さんからは欲望を全く感じないんですよね。
今日はこの対談を通して万太郎さんの欲を引っ張り出したいと思います!

万太郎

よろしくお願いします。いやー分析されてるなー。
そんなふうに見えてます?
多分、欲がないわけではないけど、基本欲を出さないんで。笑
そこは自覚しているというか。

佐藤

ほう。

万太郎

んー、僕って頭で考える人間なんです。さらに言うと自分の意見はあまりなくて、人に合わせている。なので腹の底が読めないとか。自分でいうのもなんですが。笑

佐藤

笑。

万太郎

感情がないとか。僕の生き方もそんな感じなんです。相手の反応を見て発言している。なので八方美人ですよ。超八方美人。外面がいい。

佐藤

前お会いした時も自身で外面がいいっておっしゃってましたね。

万太郎

そうですね。外面がいいって悪く捉える人もいるかもしれないけど、そこが僕の強みだと思っていて。よくとらえると三方由じゃないですか。僕が発言する事で相手がどのようにとらえてどういう感情になるかっていうのを想定して話をしている。それがほぼすべて。笑。

佐藤

なるほど。

万太郎

ちなみに今日のお昼は欲より周りの人を気にしましたね。4人で食事に連れて行ってくれたんです。お蕎麦1000円、ステーキ定食1400円。個人的にはそばが食べたかった。でも他の人が牛肉を食べたそうな会話をしていたので、ほかの人が頼みにくくならないように僕は1,400円のステーキを選んだ。

佐藤

あはは。なるほどなるほど。別に誰かが無理強いしてるわけではないけど、自らみんなに気を遣わせないように合わせる。自分の欲を優先しないんですね。

万太郎

自分の意見は決して押し通さない。その場が一番円滑に進む選択をとっている。
でも押し殺しているわけではないんです。居酒屋で大人数で飲んでいたとして、自分で食べたいものを頼むのではなくて誰かが頼んで出てきたのを食べている方が心地いい。

佐藤

えええ!ちなみに私はお店行ったら食べたいものを好きなだけ食べます。
食べたいメインがあったらコースなのに2つ良いですか?とか聞いちゃう。

万太郎

それは純粋にすごい。そんな食べられるんですか?笑

佐藤

食べられなさそうと思ったら量はもちろん減らしてもらいますが。
例えば大戸屋行ったらチキン母さん煮定食良いな、でもこっちの丼もいいなってなったら2つ頼んじゃう。食に関しては理性が働かないんです。笑

万太郎

笑。

佐藤

誰かに合わせるという話しでしたが、例えば身内でごはんに行くときはどうするんですか?それも忖度します?

万太郎

それでいうと、忖度してるつもりはないですが子どもを一番に考えますね。どこが喜ぶかなって。あ、でもそれは身内でなくて誰かとデート行くときもそうです。

佐藤

相手の好みとか。

万太郎

そうそう、相手の好みとか、この人が絶対行かなそうなことに連れて行くと、一番僕に対する評価が高くなりそうとか。そういう計算をして選ぶとか。

佐藤

爆笑。

万太郎

例えば「むしろおしゃれじゃない方が、『こんなところ初めて来た!』みたいな風にするとポイントあるんだろうなっ」て腹黒い計算はするタイプ笑。

佐藤

あれ?それだけきくと、欲ありますね。笑

万太郎

あーそうですね。

佐藤

どーやってこの人に好いてもらおうとか、そこに対してはかなり欲があるのかも?
まあ、みんなそれはそうか。一人だったら好きなもの食べるんですか?

万太郎

そうですね。自由ですしね。

佐藤

ちなみに好きな食べ物なんですか?

万太郎

なんだろう。なにかな、その土地ならではとか、そのエリア限定のチェーン店とか。静岡行ったらハンバーグのさわやかとか、福岡なら牧のうどんとか天麩羅ひらおとか。そういうの好きですね。

佐藤

うんうん。

万太郎

ローカルでチェーン展開しているのとか好きですね。
ご当地ソフトクリームなんか大好物です!

佐藤

ソフトクリーム!可愛い。笑
ローカルのチェーン店が好きな理由としては、やっぱりそこでしか食べられないから?

万太郎

それもあるし、そのエリア出身の人とその話で盛り上げるから。みたいな。

佐藤

爆笑
はいはいはい。それを聞いてたらだんだん万太郎さんがすべて計算する腹黒い人に感じてきた。

万太郎

爆笑。

現代人と昔の人の「食欲」は異なる?

佐藤

食欲って調べると、「空腹を感じ食べ物を食べたいと思う願望」って出てくるんです。
でも、今の食っておなかがすいたから食べるではなく、「お昼の時間になったからご飯を食べる」になっていますよね。現代は食欲より理性が働いてますよね。

万太郎

そう思いますね。江戸時代は第一次産業が携わっている人がほとんどで、食糧飢饉が良く起こったって記述も残っていて。生きるための食を確保するのが相当ハードルが高かった。仕事のほとんどが生きるための食の確保のために働くのがほとんどだった。

佐藤

うんうん。

万太郎

現代では食の確保のために働く人がグーっと減って、現代って逆転してそれ以外の産業に関わっている人がほとんど。となると生きるために必要な食以外の+αのところでやんややんやみんなが意見をぶつけ合っているんでしょうね。

佐藤

確かにそれはありますね。
私いま一人暮らしで、外食とかでは本能と好奇心と欲望のままに食べるのですが、自分のためにご飯を作らなくなったんです。餌というか。肉、卵も食べなくなったので、野菜と豆類。笑
食べたくて食べてるのかわからなくなってきたんです。

万太郎

なるほど。

佐藤

野菜も野菜が好きなのか、栄養を意識して食べてきたから野菜を選ぶのか。今食べたいと思っているのはどこからくる思いなのかがわからない。

万太郎

僕も大学の時はよくカップラーメンでお腹を満たしていて意識して食事をしなかった。

佐藤

今もそうですか?

万太郎

今でこそ食の業界にいますが、しっかり考えてセレクトしてこなかった。好きなように、食べるに従ってきたけど、本当にそれを食欲として意識していたかというと?ですね。

佐藤

小さいころにはおなかすいたーって言って、親がつくる栄養満点のごはん食べてました。食べれない、我慢することはなかった。やっぱり贅沢ですね。というか、それが当たり前で贅沢とも感じていなかった。そして今ではなんとなくで食べている自分がいる。

美味しいってなんだろう?

万太郎

そういえば。波佐見に行った時です。温泉入って、ちゃんとした窯でこじゃれたピザ焼いてますってお店があって。メニュー1枚目はピザがドンドンて載ってるんですけど2枚目にアジフライ定食があって。めっちゃ悩んだんですよ一人だから。お姉さんに、これ迷いません?って聞いたら皆さん迷われますって。

佐藤

万太郎

マルゲリータかアジフライか迷っているんですって相談したんです。結局はマルゲリータを選んだけど。

佐藤

ほうほう。

万太郎

めちゃめちゃ美味しかったんですけど、そこでふと思ったことがあって。
サイゼリアってすごくないですか?あの価格であのクオリティ。

佐藤

急に?笑 いやーすごいと思いますよ。ドリアとか激安ですよね。

万太郎

ピザでアンチョビがのってるのがあって、400円なんですよ。すっごく美味しくって。サイゼリアすげーなっていう。

佐藤

ヒットしたんですね。

万太郎

そう。波佐見で食べた窯で焼いたピザが1枚1,600円くらいなんですよ。それはそれですごくおいしい。すっごくおいしく温泉の後気分よく食べてた。けど、ふとサイゼリアのアンチョビのピザ4枚食べれるなって思ったときにサイゼリアが、よりすげーなっていうように感じてしまったっていう。

佐藤

笑そこでまた、万太郎節じゃないですけど、あ!って分析して考えちゃうんでしょうね。

万太郎

昔食べた軽井沢のピザ、自分で美味しいと思っているピザがあって。それも頭をよぎったんですけど、今回のマルゲリータの方がとか、いやサイゼリアだと4枚食べれるとか。食べながらいろいろ考えちゃう。

佐藤

わかるんですよー。舌で食べる美味しさと頭で食べる美味しさというか。ただ単に目の前の食だけを楽しんでいるわけではないっていう。

万太郎

そうなんです。いろいろ考えちゃう。

佐藤

私は料理を分解しちゃうんです。これ入ってるなとか、そうめん南瓜はとろろでまとまるんだ、とか発見したら家でやってみようとか。

万太郎

なるほどな―料理人の経験値があるから、考えられる幅が広い。

佐藤

逆に窯のピザを食べに行ったら、サイゼリアは出てこない。頭から除外しちゃう。あー、そろそろ終わりにしないと笑。

万太郎さんにとっての「欲」とは

佐藤

「欲望とは、食欲とは」を最後に万太郎さんの中で答えを出すなら。

万太郎

わー難しいな。

佐藤

私の中ではお菓子が食欲の分岐点でした。お菓子って本来、食欲には必要のないもの。「美味しいから食べたい」に考えが切り替わったのはお菓子でした。

佐藤

万太郎さんの欲、望むものって?

万太郎

何度考えても難しいです。でも、一つ言えるのは、相手が喜んでくれることが自分も嬉しい。

佐藤

自分よりも相手。

万太郎

性分なんでしょうね。

佐藤

相手を喜ばせるために何かしたい!という気持ちが万太郎さんにとっての欲なんでしょうね。

万太郎

そうかもしれない―。いやー自分も話していて気づくことがあって面白かったです。
ありがとうございました。

佐藤

こちらこそありがとうございました!

「将来の夢は?」と子供のころに聴かれていたこと、この質問に現代の大人がはっきりと答えられる人はどれだけいるだろうか。自分のやりたいことは「相手を喜ばせること」。これも素敵な「やりたいこと」だと思う。むしろこれを貫き通せる事は並大抵のことではないのでは。自身の考えが前に出ることを「欲」とせず、周りが前に出るように引き立てる事に「欲」を感じる万太郎さんの生き方は、「してやったり」という面白さがあるのかもしれない。
人の「欲」を探ることがこんなにも面白いと思わなかった。

次回もお楽しみに!(佐藤一成)

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