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すごいね調味料

料理に欠かせない調味料。
特に和食に欠かせないと言われている“さしすせそ”や出汁。
なかなか単体ではスポットが当たることは少ないですが、
その調味料の背景を覗いてみると、新たな発見がいっぱい。
そんな調味料の世界の面白さを知ってもらうために、
普段よく調味料を使う料理人など食にまつわることを
生業にしている方から、
イチオシの「調味料」についてお聞きします。

みりん
一子相伝(小笠原味醂)

和食には欠かせない調味料。
家庭はもとより料理人でも意外と理解されていない調味料です。
和食では、麵つゆなど醤油とみりんを1:1の割合で使う黄金比がありますが、みりんには上品な甘さと、照りつやをつけたりと色々な効果があります。
家庭では使っていないところも結構あると聞きます。
なんとなくみりんは使っていても、その効果を意識して使ったり、みりんによって味わいがかなり違うことも知られていないので、ぜひ改めて味わっていただきたい調味料の一つです。

小笠原味醂醸造の
ここがすごいね

何といっても小笠原さんの人柄、その一言に尽きます。
一見、ものすごくいかつくて、少々乱暴な話し方で怖そう。
ところが話すとすごくピュアで、優しく面倒みがよい方です。
好き嫌いはかなりはっきりしています。
好きなことはものすごく好き、嫌いなものは絶対に嫌い。
みりんに対する情熱はかなり熱いです。
蔵の中は隅々まできれいで、作業工程も細部に渡り丁寧。
それを本人に聞くと「そんなことは当たり前で普通のことじゃん。口に入れるものを造っているんだぜ。こだわりでも特別でも何でもないよ」。「凡事徹底」という言葉を、みりんに関してここまで徹底している人はいないんじゃないかと思うほど。
みりんもすごくピュア、そしてそれを2年熟成することでコクとまろやかさを。見た目は少し茶色がかっているけど、味わってみるとエレガントな香りと上品な甘さが広がり、「あ、小笠原さんが造ったみりんだ」ということが良くわかる味わいです。
小笠原さんの制服は白のTシャツと頭には青の手ぬぐいをキッと縛って。
厳しい顔の合間に見せる笑顔がすごくチャーミング。支えあう奥様とのやり取りも昔のホームドラマの様で素敵なんだとか。

一子相伝の
ここがすごいね

もちろん他にも美味しいみりんはたくさんあります。
日本酒もそうだけど美味しいみりんであるほど個性的で、それに合わせた使い方をした方がより美味しくなると自分は思っています。
それはお酒のペアリングも同じことがいえますよね。
小笠原みりんはそれを考えるとすごく使いやすいみりんです。
教科書(レシピ)通りに使って確実に料理の味を向上させてくれる。
バランスの平均を保ったまま、偏差値の高いところまでぐぐっと向上させたようなみりん。
料理におけるみりんの役割を考えた時、他の調味料とのバランスがよく、主張が控えめで料理を支えてくれる名脇役です。
その中でも「一子相伝」は醸造アルコールを使わず焼酎で仕込む純米本みりん。よりまろやかな味わいで後味がきれいなのも魅力的です。

イラスト モノ・ホーミー

おすすめの
使い方
茄子の揚げ浸し

基本的な麺つゆは「醤油1:みりん1:だし4」です。
だしは昆布とかつおぶしで、かつおが強めがいいと思います。
醤油はこいくち醬油。お好みのものを。
みりんを鍋に入れて火にかけてアルコールを飛ばし、醤油とだしを入れ沸く手前で止めて冷まします。この時に好みで追いがつお。

調味料概要

本みりん。
もち米(国産)、米こうじ(国産米)、焼酎(国内製造)で造る純米本みりん。

メーカー概要

小笠原味淋醸造。
三河みりんの本場愛知県碧南市にある、ご夫婦で営む小さなみりん専門メーカー。

紹介者プロフィール
長田 勇久

「小伴天」代表取締役社長。「日本料理一灯」店主。大学卒業後、つきぢ田村にて6年間修行。のち小伴天に戻る。地元愛知の漁港、畑、醸造蔵をめぐり、様々な作り手の思いのつまった食材を使った日本料理「一灯」を2015年オープン。店主をしつつ、白醤油講座、愛知大学オープンカレッジ講師など多方面で地元の伝統的な野菜や調味料、和食の魅力を伝える活動や、真空調理をはじめとする新調理技法の講師としても各地で講演や指導をしている。新調理技術協議会幹事/和食文化国民会議幹事。著書「真空調理で日本料理」「わかりやすい真空調理レシピ」「調味料の事典」(柴田書店出版)

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